英語を話す上で重要な位置を占めるものに前置詞があります。代表的なものであれば [at, in, on, of, for, from, to, with, about, by] 等、他にも結構な数の前置詞が存在しています。そんな沢山ある前置詞は数が多いということに留まらず、使い方も多岐に渡っているので意外と厄介なものです。
厄介と感じる大きな要因は、大抵、数が多く用途が広い部分を全て(または大方)覚えようとすることで生じるものと言えます。今回はどう工夫し前置詞を使えるものにするのか考えていきます。
英語における前置詞の位置づけとは
英語の前置詞は名詞の前に置かれるものと、参考書などにはよく書いてあります。
でもそれだとなかなか前置詞の用途を感じにくいので、前置詞は足りていない説明を補足する接着剤効果を持つものと考えます。その時に前置詞の後に配置されるのが名詞(または名詞に属するもの)です。
英文の中での主な立ち位置は、基本文の核(主語 動詞 動詞に関連)の後に配置され、[主語 動詞 動詞に関連 ~ (+ 前置詞 名詞)] となります。
基本文について詳しく知りたい方は、こちらを読んでください。
英語で前置詞が配置される場所は?
前置詞は、基本文の核の後以外にも配置することが可能です。
前置詞が配置される場所は、主に以下の三か所になります。
1, 基本文の核の後に配置される(これが基本の位置)
2, 主語を拡張するために主語(名詞)の後に配置される
3, 基本文の核の中の [動詞に関連] として利用される
1, [基本文の核の後に配置される(これが基本の位置)]
=> I ate sushi + in Shibuya.
=> He came here + by bus.
英語は基本文の核までで主要な要素を説明し、不足している説明を接着剤で補足していきます。(これが英語の基本原理だと考えています)
2, [主語を拡張するために主語(名詞)の後に配置される]
=> The book on the table is mine. (テーブルの上の本は 私のです)
=> The cat in the park was big. (公園にいた猫は 大きかった)
英語で主語になるのは基本 [I, You, He, She, We, They, It, 名詞] のどれかです。
[I, You, He, She, We, They, It] は主語を拡張させるものではないので、主語が拡張可能なのは主語が名詞の時だけです。なのでその場合は [名詞 + 前置詞] となります。
動詞と [動詞に関連 (目的語/補語)] の拡張については、こちらを読んでください。(主語の拡張については今後詳しく解説予定です)
3, [基本文の核の中の [動詞に関連] として利用される]
=> I was in the bank. (私は いた その銀行に)
=> The picture was on the wall. (その絵は かかっていた 壁に)
これは基本文の核を形成した後の説明の補足機能としてではなく、それ自体が動詞に関連するものとして利用されます。動詞に関連として利用されるので、ここで [前置詞 +α] のユニットを省略することはできません。
前置詞が基本文の後に使われる場合は、それが無くても英文としての問題は生じませんが、前置詞が [動詞に関連] に配置される場合は、基本的にそれが無いと英文が完成していない状態になります。
補足:[前置詞 + 名詞] は英文の頭の所でも利用可能ですが、英語の感覚を身につけるためにそれはイレギュラーな形と覚えておきましょう。
英語の前置詞をどうやって使えるようにするのか?
最初の段階から全ての前置詞を覚えるのは難しいので少し工夫をします。
- a, 主要な前置詞に焦点を絞る
- b, 重要度の高い意味に限定して覚える
英語の前置詞を全て覚えようとせず主要なものをまず頭に入れます。
取りあえず [at, in, on, to, from, for, with, without, of, about, by, until, before, after] に絞ります。
また最初の段階から多くの意味を覚えようとするとアウトプットしにくいので、使うものを限定してインプットしていきます。それに加えて付け足す説明も [名詞/動名詞] に限定しておきます。
[at]... (どこどこ/何回目/~価格) で/に
=> Bob passed the test at the second attempt. (ボブは受かった その試験に二回目で)
=> She bought the book at a discount. (彼女は買った その本を 割引価格で)
[in]... (どこどこ/何々) で/に
=> I was in Nagoya yesterday.(私はいた 名古屋に 昨日)
=> He spoke to me in Spanish. (彼は話しかけた 私に スペイン語で)
[at/in] の場所に対する日本語は [(どこどこ)で/に] と同じものですが、[in] の方が [at] に比べて、広がりや内側を感じさせる場所という違いがあります。
[on]... (接触した部分) に
=> There is a picture on the wall. (ある 一枚の絵が 壁に)
=> I met her on the street. (私は出会った 彼女に その道路で)
=> There was a hospital on the river. (あった 一件の病院が その川沿いに)
~の上にという意味だけでなく表面に接していれば、上だけでなく下も横も [on] で表現します。道路、川べり、海辺なども面に接しているという扱いで [on] が利用できます。
[at, in, on] に関係しているので、[時刻・日時・曜日] などはセットで頭に入れます。
at + 時刻/週末/公休日 => at 4 o'clock/at the weekend (アメリカの場合は on)/at night/etc
in + 一日のある時間/比較的長い期間 (月,年,四季,世紀) => in the morning (afternoon/evening)/in April/in spring/etc
on + 曜日/日付/特定の日時 => on Sunday/18th March (アメリカの場合は March 18th)/etc
[to]... (どこどこ) に/へ
=> She came to the party. (彼女は来た そのパーティーに)
=> The traffic light changed to red. (信号は変わった 赤へ)
この [to] は [~すること/~するために] という使い方もありますが、それは動詞とセットで利用する別な接着効果(不定詞)なので違う機会に説明します。
別の接着効果についてはこちらで少し説明しているので、気になる方はどうぞ。
[from]... (どこどこ/誰々/何々/いついつ) から
=> I got the news from him. (私は聞いた そのニュースを 彼から)
=> Bob saved the child from drowning. (ボブは救った その子供を 溺死から)
=> He is a friend from high school. (彼は友達です 高校からの)
[for]... (誰々/何々) のために(の)
=> This machine is for washing potato. (この機械は 洗うためのものです ジャガイモを)
[with]... (誰々/何々) と
=> This wine goes best with fish. (このワインは相性がいい 魚と)
一緒に覚えておきたいのが [~で(道具), ~を持っている/がある]
=> Bob ate ramen wiht chopsticks. (ボブは食べた ラーメンを 箸で)
=> He has a house with a small garden. (私は持っている 家を 小さな庭のある)
=> I saw a woman with green eyes. (私は見た 女性を 緑の目をした)
[without]... (誰々/何々) なしで
[of]... ~の~
=> She is a friend of mine. (彼女は友達の一人です 私の)
=> The leg of the desk was broken. (机の脚が 壊れた)
この [of] は {名詞 of 名詞} が基本体形です。その中でも色々な組み合わせがあるのですが、まず [部分 + 全体] という組み合わせを頭に入れることで [of] の感覚を掴んでいきましょう。
[about]... ~について(の)
=> We talked about our goverment. (私達は話した 我々の政府について)
=> I'm worried about his health. (私は心配している 彼の健康について)
=> I bought two books about birds. (私は買った 二冊本を 鳥についての)
[~の周りに/およそ] という意味もありますが、この [~について(の)] が会話において最も重要度が高いと言えます。
[by]... ~によって/~までには (~する/なる)
=> This car is made by a new method. (この車は作られた 新しい方法で)
=> You have to come back here by 6 o'clock. (あなたは戻ってこなければならない ここに 6時までに)
移動手段は通常 [by] で説明可能なのですが、特定の乗り物を指定する場合 (the taxi/his car 等)、上に乗ると考えられるものは [on]、中に乗り込むと考えられるものは [in] を利用します。
=> I came here on the bus (train/ship/etc). (私は来た ここに そのバスで/その船で)
=> I came here in the taxi. (私は来た ここに そのタクシーで)
=> I came here in father's car. (私は来た ここに 父親の車で)
徒歩でという場合は [on foot]
=> I came here on foot. (私は来た ここに 徒歩で)
[until]... ~まで(~な状態が続く)
=> You can stay here until next Monday. (あなたは滞在可能です ここに 次の月曜まで)
[by] はある時点(指定された時間)までに何かを~する/が~になっている場合に用いるので [~までに] で、[until] は行動・状態がある瞬間(指定された時間)まで続く場合に用いるので [~まで] となります。
助動詞 [will] [can/could] の使い方については、こちらを読んでください。
[before/after]... ~前に/~後に
=> Bob came here after 10 o'clock. (ボブは来た ここに 10時過ぎに)
否定文において、その時まで~しなかったが、その後に~した場合は、[before] ではなく [until] を使います。
=> Bob didn't come here until 10 o'clock. (ボブは来なかった ここに 10時までに {...がその後に来た})
前置詞に適した日本語に注目して、どのくらいの幅に対応できるのかを意識して頭に入れていきましょう。
そこからさらに必要なことは?
上の前置詞を見て、少なくした割りに結構多いじゃんと思った方もいると思いますが、基本簡単な意味ばかりですし、前置詞はある程度セットにして覚えていく方が効果的なので一緒に覚えてください。
その理由は、前置詞は意味の幅を [名詞/動名詞] で作り出す以上に前置詞の違いによって産み出すものと考えられるからです。
例えば不定詞 (to 動詞)は、動詞とくっついて [~すること、~するために] という意味で利用されますが、その不定詞の意味の幅は動詞を変えることで産み出します。
それに対して [前置詞 + 名詞/動名詞] では、名詞/動名詞の部分で意味を変えることの他に、前置詞自体を変えることで意味の幅を作り出していると言えます。
お勧めは以下のように日本語を整理しまとめておくことです。
1, どこどこで/に/へ/から
2, 誰々と/から/のために/について
3, いついつに/から/まで/までに/前に/後に
4, 何々の/で/から/のために/について
整理した日本語を利用して練習を積み重ねていきます。英語を話すためには覚えたものを瞬時に記憶から引き出す必要があります。
まず適当な日本語(~は/が ~する ~を/に)を思い浮べ英文(基本文の核)を作成します。
=> I met Bob (私は 会った ボブに)
その基本文の核を起点にして、接続可能だと考えられる [前置詞 + 名詞] を色々と当てはめていきます。その時わからない英単語は辞書等で調べて例文を完成させます。
=> I met Bob + in the bank. (銀行で)
=> I met Bob + in the hospital. (病院で)
=> I met Bob + on Sunday. (日曜日に)
=> I met Bob + for meeting. (会議のために)
=> I met Bob + after lunch. (昼食の後に)
一つ説明を付け足す事ができたら、違う前置詞で説明が付け足せないかを考えていきます。そうすることで自身が付けたせる説明の幅を拡げていきます。
ここで重要なのは、誰かがそれをできるのかどうかではなく、あなたが素早く [前置詞 + 名詞/動名詞] のユニットを導き出せるかどうかです。幅を意識し日本語との結びつきを強めることで [日本語 => 前置詞 + 名詞/動名詞] とできるように練習を繰り返しましょう。
またそれらは一つ付け足すだけでなく複数付け足すことも可能です。
=> I met Bob + in the bank + after lunch.
英語で前置詞を配列する順番は、場所、様態、時なのですが、これは絶対ではないので大体この流れと覚えておけば問題ありません。
練習を積み重ねることで [前置詞 + 名詞] という小さなユニットと、基本文の核のどの動詞と相性が良いのか等を脳に強く印象付けていくことが大事です。英語を話すためには、なるべく実戦に沿った練習をするのが効果的です。
練習で表現できないことは、実際に英語を使う場面でも表現できないと考えてください。それが現実です。
英語に関することを頭に入れたら、それをどう引き出すかを考え実行できるようにしないとなかなか英語を話せるようにはなりません。大部分において英語は、基本文の核という基盤に足りない説明を後で付け足していくことを前提としている言語です。[前置詞 + 名詞] という部分だけを覚えてもそれでは英文は作成できません。
[前置詞 + 名詞] は基本、補足部分です。英語を話すということは英文を作成するということです。基本文の核(主語 動詞 動詞に関連)と連動させて練習することが英語上達への道です。
基本文の核をどう作成していくのか、また動詞とのつながりを意識すべき理由については、こちらを参考にしてください。
英語において前置詞を使えるようにしていくことは、助動詞で動詞を拡張することと並んで、英語で表現できる幅を拡げていくための第一ステップと言えます。助動詞もセットでインプットしていけばさらに効果的です。
助動詞の使い方については、こちらをどうぞ。
追記:折角なので、主な前置詞を中心となる日本語の意味でまとめてみました。
[場所・空間・動作]
at - (どこどこ)で => [at the theater] (比較的狭い一点)
in - (どこどこ)で => [in Shibuya] (広がりを感じる場所)
on - (どこどこ)で => [on the beach] (面して/接して)
to - (どこどこ)へ => [to the station]
from - (どこどこ)から => [from here]
into - ~の中へ/に => [into the room]
out (of) - (中から)外へ => [out of the door]
off - ~から離れて => [off the main road]
away from - ~離れたところ => [20miles away from the coast]
up - ~の上に/へ => [up the hill/slope]
down - ~の下に/へ => [down the hill/slope]
above - (より)上に => [above the clouds]
below - (より)下に => [below the horizon]
over - ~の上方に => [over the trees]
under - ~の下に => [under the table]
across - ~を横切って => [across the river]
along - ~に沿って => [along the street]
through - ~を通り抜けて/通して => [through the crowd]
beyond - ~の向こうに/~を越えて => [beyond those mountains]
around - ~を曲がって => [around the corner]
after - ~を追って => [after the man]
[接触]
on - ~の上(接触した部分)に => [on the table/wall]
over - 覆って => [over the field]
beneath - ~の下(接触した)に => [beneath a plie of papers]
[近接・周辺]
near - ~の近くに => [near the station]
by - ~のそばに => [by the park]
beside - ~のすぐ隣のに => [beside the tree]
next to - ~の隣/次に => [next to the house]
around/about - ~の周りに/辺りに => [around the table]
behind - ~の後ろに/裏側に => [behind the house]
in front of - ~の前に => [in front of the door]
in back of - ~の後ろに => [in back of the tree]
opposite - ~の向かいに => [opposite the bank]
[時間・日時]
at - 時間のある時点 => [at 6 o'clock]
in - 幅のある時間 => [in the morning]
on - 曜日、特定の日時 => [on Sunday]
within - ~以内に => [within an hour]
by - ~までには(~する/なる) => [by tomorrow]
until - ~まで(~な状態が続く) => [until next month]
before - (いついつ)の前に => [before 11 o'clock]
after - (いついつ)の後に => [after school]
from - (いついつ)から => [from 7 o'clock] (完了形の場合は [from] ではなく [since])
behind - (定刻より)~遅れて => [10minutes behind schedule]
for - ~の間 => [for 2weeks]
during - ~期間中 => [during the winter] (その期間ずっとでも、一部の時期でも可)
through - ~の間中ずっと => [through the month of May]
[つながり]
of - ~の~ => [leg of the table]
with - ~と(一緒に/含めて) => [with her/tax]
without -~なしで => [without sugar]
[間]
between - ~の間に => [between this and that]
among - ~の間(中)を => [among the trees]
[(移動)手段]
by - ~で => [by bus/car/train/airplane]
on - ~で => [on foot/on the train/on the bus]
in - ~で => [in the taxi/in my car]
特定したバスや電車など(上に乗ると考えられるもの)の場合は [on]、
特定したタクシーや車など(中に乗り込むと考えられるもの)の場合は [in] を使います。
[手段]
by - ~によって/で => [by a new method]
[道具]
with - ~で => [with a knife]
[目的]
for - ~のために => [for her]
[関連]
about - ~について => [about my health]
[賛成・反対]
for - 賛成して => [for his plan]
against - 反対して/対して => [against the plan]
最初から全てを覚えるのではなく、まず中心となる前置詞を使えるようにして自分の中に英語の軸を形成していきましょう。ローマは一日にしてならずです。