英文法(英語の文法)という言葉を聞くと、学校での英語の授業を思い出して身構えてしまいますが、あまり難しい話は出てきません。英語を話すために必要なことは、英単語を覚える、発音、リスニングの強化、英文法を知る等、いくつもありますが、それらの中でも最初の段階で優先すべきなのは文を構成するルールを理解することだと思います。
英語は日本語とかなり距離のある言語です(似通っている部分が少ない)。そういう言語間に距離があればあるほど、文を構成するルールをよく理解する必要があります。その言語が持つ文の構成ルールを知らずに文を作成すると、それを聞いた相手は何かしらの違和感を持つ確率が高くなります。その違和感を生じさせないために英語が持つ文を構成するルールを身につけて、英文作成の能力を向上させていくことが大事です。
英文法を理解する前に
英文の構成を簡素化すると、英語は以下のようになっています。
基本文:[主語 動詞 動詞に関連 ~ (+ 接着剤 説明)]
(その中の [主語 動詞 動詞に関連] までが、基本文の核)
英文は、1 [主語]、2 [動詞]、3 [動詞に関連]、4 [接着剤 説明] の四つの枠組みで構成され、それら四つの枠組みが、状況に応じて、個々に拡張したり複数が拡張したりすることで文が長くなります。(ここでいう拡張とは説明を補足するために文が長くなる事と考えてください)
今回注目するのは、3 [動詞に関連するもの (目的語/補語)] の拡張についてです。それがどういうルールで長くなるのかを紐解いていきます。
因みに[動詞に関連するもの] とは、動詞の次に配置されるものです。(目的語/補語をまとめたもの)
基本文については、下の二つを読んでください。
[動詞に関連] の拡張の種類はいくつあるのか?
[動詞に関連] が長くなるパターンは、三つあります。
a, [主語 動詞 補足 +動詞に関連]
b, [主語 動詞 動詞に関連1 動詞に関連2]
c, [主語 動詞 接着剤 +α全てが動詞に関連]
例文で見てみましょう。
a, It is a [beautiful flower].
b, He gave [me some books].
c, I can't believe [what you said].
a は形容詞で名詞の補足したもので [a beautiful flower] が一塊。
b は動詞に関連がもう一つ必要な形。
c は動詞に関連が関係代名詞 [what] で置き換えられた形。
[動詞に関連] の拡張とは、b の形をとるものです。(a は名詞が長くなったもの、c は関係代名詞 [what] +α で置き換えられたもの)
通常の基本文は [主語 動詞 動詞に関連 ~ (+ 接着剤 説明)] ですが、
今回のものは [主語 動詞 動詞に関連1 動詞に関連2] ~ (+ 接着剤 説明)] となります。
[動詞に関連] が拡張する場合の特徴は、それが独力で拡張するわけではないという点です。
上記 b に含まれる [動詞に関連2] の存在は英文を成立させるために必須なもので、動詞の指示(または動詞をどう使うか)によっているかどうかが決まります。前置詞や接続詞等のように接着剤 +α (in the park, with Bob 等)で説明が付け足されていくものではありません。
そもそも [動詞] と [動詞に関連するもの] は、[動詞] が主で [動詞に関連するもの] が従という関係性を持っています。それが今回は主従関係の従にあたるものが二つ必要になるってことです。
[動詞に関連] を拡張させていく動詞がどんなものかというと、
1, give, buy, show, tell, write, send, call, name, 等
2, see, hear, feel, find, notice, smell, catch, want, 等
3, find, leave, keep, get. believe, make, paint, 等
4, have, get
5, make, let, have, get
(重なっている動詞があるのは間違いではありません)
五つに分類わけしたこれらの動詞群が、動詞に関連を一つから二つに拡張させる効果を備えています。これらの動詞を使えば必ず [動詞に関連] が拡張するわけではなく、一定の条件下で用いることによって [動詞に関連] が拡張していきます。
例文
=> I made a poem. (私は作った 一遍の詩を) -拡張無し
=> I made him go there. (私はさせた 彼を そこに行くように) -拡張有り
五つに分けているのは、それらの拡張の仕方に違いがあるからです。
1, 主語 動詞 [人/名詞] [名詞]
2, 主語 動詞 [人/名詞] [動詞の原形/進行形~/to 動詞]
3, 主語 動詞 [名詞] [形容詞/過去分詞]
4, 主語 have [名詞] [過去分詞]
5, 主語 make [人/名詞] [動詞/形容詞]
例文でみると、
1, I gave [her] [some books].
2, I saw [her] [cry].
3, I left [the door] [open].
4, I had [my hair] [cut].
5, The movie made [me] [laugh].
[動詞に関連するもの] の拡張の種類が、五つも存在するからといって特に難しく考える必要はありません。
[動詞に関連] の拡張をどうやって使えるものにするのか?
[動詞に関連] の拡張を、どうすれば使えるようにしていけるのでしょう?
それにはまず [動詞に関連1] の後で英文に切れ目を入れます。
基準となる英文は [主語 動詞 動詞に関連] です。(拡張していない文)
=> I ate sushi. (私は食べた 寿司を)
=> He bought a book. (彼は買った 一冊本を)
三つの要素で一応英文が完成しています。
それに対して [動詞に関連] が拡張した英文に切れ目を入れると、
1, I gave her / (私はあげた 彼女に...)
2, I saw her / (私は見た 彼女を/が....)
3, I left the door / (私はそのままにした そのドアを....)
4, I had my hair / (私はしてもらった 自分の髪を....)
5, The movie made me / (その映画はさせた 私を....)
そうすると当然、何かが足りていない英文になります。
その説明の欠けている部分を日本語で考えてみます。
1, 私は あげた 彼女に => 何を (あげたの)?
2, 私は 見た 彼女を(が) => どんな(彼女を見たの)?
3, 私は そのままにした そのドアを => どう (したの)?
4, 私は してもらった 髪の毛を => どう (してもらったの)?
5, その映画は させた 私を => どう (させたの)?
日本語で考えてみると、何が欠けているのかが非常に明確になります。
これらの英文はそこに接着剤なしで説明を付け足せるものと考えるのです。
1, I gave her / + 何を(あげたの)? => some books/a pen/a beautiful flower/etc .
2, I saw her / + どんな(彼女を見たの)? => cry/crying/running/walking/etc .
3, I left the door / + どう(したの)? => open/locked/etc .
4, I had my hair / + どう(してもらったの)? => cut/colored/etc .
5, The movie made me / + どう(させたの)? => sad/happy/etc .
感覚としては、
1, 基本文の核 + [名詞]
2, 基本文の核 + [動詞の原形/進行形 ~/to 動詞]
3, 基本文の核 + [形容詞/過去分詞]
4, 基本文の核 + [過去分詞] -(have,get)
5, 基本文の核 + [動詞/形容詞] -(make,let,get,have)
[動詞に関連1] まで来た時、-「まだ何かが欠けてるね」感じ、そこに何かしらの説明を付け足せるのが [動詞に関連するもの] の拡張です。
単純化した日本語で表すと、
1, (主語は ~する 誰々に / + ~を)
2, (主語は ~する 誰々が / + ~するのを)
3, (主語は ~する 名詞を / + ~に)
4, (主語は してもらう 名詞を / + ~に)
5, (主語は ~させる 誰々を / + ~に)
[動詞に関連 (目的語/補語)] の後に線を引くことで、そこに思考の重心をシフトできれば説明を付け足しやすくなります。英語は説明をどんどん後から付け足していく言語です。
英語が説明を付け足していく性質を持っているのに、少し前のもの(ここでは動詞)が拡張の主導権を握っているのは瞬間での思考に不都合です。
接着剤を使って説明を付け足していく場合は、接着剤を使うと決めたタイミングと使うタイミングにズレはありませんが、今回のように動詞が拡張の決定権を持っていると、動詞を使うと決めたタイミングと説明を付け足すタイミングに微妙なズレが生じます。そのズレを解消するために、動詞に関連の後に線を引き、思考の重心をそこに移します。
[動詞に関連するもの] の後に頭の中で架空の線を引ければ、脳がそこで考える時間を作れます。そうすることで、[この文は、~が足りてないから、これを足すかな] と考えられるようにしたいのです。
もちろん [動詞に関連するもの] の後に線を引いて考えるからと言って、[動詞に関連] の拡張を決定するのは [動詞] に変わりはありません。
なので正確に言うと、[動詞に関連] の拡張を、線を引いた部分で操作していると良い意味で脳に勘違いさせてしまおうということです。これが特に効果を発揮するのは、付け足す説明に動詞を含む場合です。(2 の知覚動詞や、5 の使役動詞など)
続けて練習してみましょう。拡張の仕方を知っただけで終わってしまうと、それらが英文法の理解を深めることに結びついていきません。それを使えるようにしていく必要があります。そのためには結局のところどのくらい練習したのかが問われることになります。
例えば、I gave her some books. という文を考えたとします。
=> 1, [動詞に関連2] の [some books] を色々なものに変える。
=> 2, [動詞に関連1] の [her] を他のものに変える。
=> 3, 分類1 の中の違う動詞を使って例文を考える。
=> 4, 1,2 の作業を、3 の動詞でおこなう。
まず [動詞に関連2] に変化を加えていくことで、動詞に関連がどう拡張していけるのかを徹底して練習していきます。それからその動詞で他にどう表現を広げていけるのかと、同じタイプの動詞ならどんな表現が可能なのかを練習することで表現できる幅を拡げていきます。
この時、自分が日本語で日常的に使っている動詞と 1~5 の中の動詞を結び付けていくことが望ましいです。
このように、一つの動詞について練習するだけでも相当な時間がかかります。どんなに英文を構成するルールを理解しても、練習してそれを自分のものにしていかなければ英語は話せるようにはなりません。
[動詞に関連] の拡張を理解するには、動詞 [give] から始めるのがお勧めです。それについてはこちらも参考にしてください。
4 の [~してもらう] については、こちらに詳しく書いてあるのでどうぞ。
接着剤効果のあるものについては、こちらに詳しく書いてあるのでどうぞ。
[動詞に関連] の拡張が、英文法の理解に重要なの理由とは?
英文法の最重要課題は、英語の基本となる文の構成を学ぶためです。
その軸となるのが動詞です。
動詞が [動詞に関連] を決定し、場合によっては [動詞に関連] の拡張をも決定します。なので動詞がどういう働きをするのかを十分に理解することが、英文法を理解するための重要なステップなのです。
英文法をただ単純に文法書に書いてある通りに頭に入れるだけでは、英会話の上達にははなかなかつながりません。文法は英語の文の構成ルールを理解するためのものであって、英語を話すということに特化したものでないからです。英文法を英語を話すために自分でいかに解釈し直すのかが非常に重要になります。そうやって英文法を自分なりに捉え直すことで、英文法をより深く理解していきましょう。