私は英語を話せなかった頃、[give] が英語において非常に大きな役割を果たしているということを全く理解していませんでした。[give] は動詞 [get, be, have] 等と並んで、それが本来持つ意味の他に、重要な要素を我々に与えてくれるキーとなる動詞です。[give] を掘り下げることは英文構成に対する理解を深めるだけでなく、英語のスピーキング上達へも大きな効果をもたらします。今回はそんな動詞 [give] に注目し、英語スピーキング能力の向上について考えます。
なぜ [give] が英語スピーキング上達の鍵を握るのか?
それは動詞 [give] が重要動詞であり、[~される側からの視点] を持ち合わせている動詞だからです。
重要動詞とは [get, give, be, have, take, make, do, put] 等の使用頻度の高い動詞群のことです。
[~される側からの視点] とは、動詞 [give] であれば [~をあげる/与える] の他に、[くれる] [もらう] という意味(別の角度からの視点)にも対応可能ということです。
1, Bob gave her a book. (ボブはあげた 彼女に 一冊の本を)
2, Bob gave her a book. (彼女はもらった ボブに 一冊の本を)
1と2は同じ英文ですが、1は主語の人から見た視点で、2は動詞の後の、[動詞に関連1] に配置される人から眺めた視点となります。この2の視点が英語のスピーキングに何をもたらすのかを掘り下げていきます。
[give] の [~される側からの視点] はこちらでも説明しているので、よかったらどうぞ。
[~される側からの視点] は [give] の特権なのか?
この [~される側の視点] は、何も動詞 [give] だけが持っているものではなく、他にも [show, tell, bring, hand, offer, throw] 等の動詞も持ち合わせているものです。
=> She showed me the picture. (彼女は見せた/私は見せられた)
=> Bob told her a lie.(ボブは言った/彼女は言われた)
=> Bob offered her a ride to the hotel.(ボブは提案した/彼女は提案された)
=> I threw him the ball.(私は投げた/彼は投げられた)
共通項は、
- 1, 動詞に関連が拡張し、動詞に関連2が存在する。
- 2, 基本文の [動詞に関連1] の部分に『 人 』を置ける。
[主語 動詞 動詞に関連1 動詞に関連2] で英文が構成されていて、動詞に関連1に入る [人] の視点から物事を眺めている文が [~される側からの視点] となります。
英文の流れで日本語を考えると、
動詞 [give] なら、[私は 与えられた] => [誰かが くれた 私に]
動詞 [show] なら、[私は 見せられた] => [誰かが 見せた 私に]
動詞 [tell] なら、[私は 言われた] => [誰かが 言った 私に] となります。
基本文とは、
基本文:[主語 動詞 動詞に関連 ~ (+ 接着剤 説明)]
([主語 動詞 動詞に関連] までが、基本文の核)
英文は [主語] [動詞] [動詞に関連] [接着剤 説明] という四つの枠組みで構成され、それら四つの枠組みは状況に応じて個々に拡張したり、複数が拡張したりします。
[主語] ,,,, I/You/He/She/We/They/It/名詞
[動詞] ,,,, [~する] という意味を表すもの
[動詞に関連] ,,,, 名詞/形容詞/me/you/him/her/us/them/it/たまに副詞(正確には動詞に関連するもの)-[目的語/補語] でも可
[接着剤 説明] ,,,, 前置詞/不定詞/動名詞/接続詞/関係代名詞/関係副詞 etc (正確には接着剤効果のあるもの)
拡張とは、それが単独ではなく何かと一緒に利用されることで、[表現できる幅を広げていくこと] を意味しています。
基本文について詳しく知りたい方は、こちらを読んでください。
[~される側からの視点] を利用するメリットとは?
ではその [~される側からの視点] を持つことのメリットはどんなものなのでしょう?
1つ目のメリットは、[~される = 受動態/受け身] と考えなくなる点です。
受動態は、主に以下の三つの場面で利用されるものです。
- 1, [動詞に関連] に当てはまる [人/物/事に] 焦点をあてた文を利用したい場合
- 2, 行為者が明確ではない、または行為者を明確にしたくない場合
- 3, 客観視した表現を利用したい場合
1, [{動詞に関連} に当てはまる [人/物/事] に焦点をあてた文を利用したい場合]
通常、英文は [主語 動詞 動詞に関連 ~ (+ 接着剤 説明)] という流れで形成されます。
=> He stole my bicycle . (彼は 盗んだ 私の自転車を)
この基本文の中の動詞に関連(ここでは、my bicycle)に来るものに、焦点をあてて英文を作成したい時に活躍するのが1のタイプです。
[my bicycle] に焦点をあてるために、[my bicycle] を主語の位置に配置して、その後に [+ be動詞 動詞の過去分詞(能動態で使われている動詞を)] を配置することで受動態を完成させます。
=> He stole my bicycle .-能動態
=> My bicycle was stolen (by him) .-受動態
[stolen] の後の [by him (それを行った行為者)] は、それがないと意味が伝わらない場合以外はなくても問題ありません。受動態においてその部分はあまり重要ではありません。その部分を強調したいなら通常の基本文で表現すればいいだけです。
ここで [私は 盗まれた] だから、
=> I was stolen my bicycle (by ~) . としてはなりません。
そうできない理由は、
1, 動詞に関連に配置されているのは [my bicycle] で、[me] ではないから。
2, [steal] という動詞は動詞に関連に [物/事] を配置する動詞で、性質上 [動詞に関連] を拡張させない動詞なので動詞に関連に [人] が配置されることはないから。
とすると [steal] を受動態で利用する時は、必ず主語の位置に配置されるのは [物/事] だということです。
2, [行為者が明確ではない/行為者を明確にしたくない場合]
会話において行為者が誰なのかわからないことや、行為者を明確にしたくないことについて話す場合が存在します。それを行ったのが誰かはわからない(定かではない)が、そこで起こったある事象を説明したい場合、[物/事] を主語に配置することで文を作成していきます。
例えば、私は自転車を盗まれたのだが、誰に盗まれたのがわからない/明確にしたくない理由がある場合、
=> My bicycle was stolen . (自転車を盗まれた)
誰に盗まれたのかはわからないので、[by 人] は無しです。
3, [客観視した表現を利用したい場合] はここでは省略します。
受動態(受け身)については、こちらで詳しく説明しているので参考にしてください。
これを見てわかるように受動態(受け身)は、どんな場面でも使われるものではなく、ある状況下で利用されるものということです。
[~される = 受動態/受け身] と考えてしまうと、英語に適さない場面でも受動態/受け身で表現してしまうことになります。
それに対して [~される側からの視点] を活用できれば、
a-[自分が~された] なら => [した人 動詞 me ~] 、
b-[自分以外の誰かが~された] なら => [した人 動詞 された人 ~] とできます。
私は英語が話せなかった頃は [~される] という日本語を見ると、ほぼ100%の確率で『 おっ、ここは受動態(受け身)ね。』と発想していましたが、今は例えば [私は 聞かされた] を表現したいなら => [誰か told me ~] と発想するのが基本です。
上記の説明を見てもわかるように、受動態はどんな場面においても利用されるものではないので、[~される => 受動態(受け身)] という発想は正しい思考の流れとは言えません。[~される側からの視点] を軸にしましょう。
動詞 [give] から [~される側からの視点] について考えるようになる。=> [~される = 受動態] という発想に縛られないことで、[give] と同じ [~される側からの視点] を持つ[show, tell, bring, hand, offer, throw, etc] に注目するようになる => それらの動詞を使う場面が増えて、自身が使える動詞が増加していくという好循環を生み出します。
補足:[行為者が明確ではない/明確にしたくない] ではない場合でも、[somebody(誰か)] を活用すれば、受動態を利用せずに英文を作成可能です。
=> Somebody gave him a letter. (誰かが渡した 彼に 手紙を = 彼は渡された 誰かから 手紙を)
[~される側からの視点] を利用することで得られるもう1つのメリット
[~される側の視点] を利用することには、[~される = 受動態(受け身)] と考えなくなるだけでなく、もう1つ大きなメリットがあります。
それは『 人の立ち位置を、頭の中で明確にするようになる 』という事です。
これは [誰がどの立ち位置で、相手はどの位置なのか] を明確にする視点を持つということで、英語を話すのに役立つ便利な技術と言えます。
日本語では主語は頻繁に省略されます。また [誰々に] という部分も文脈の中でよく省略されます。
例えばバレンタインデーの翌日に友達と、
A- 昨日、職場でチョコもらったよ。
B- へぇ~良いね。羨ましいよ。
日本語では、これだけでも十分に会話が成立可能です。
もちろん、
b1-誰にもらったのか ??
b2-どんなチョコをもらったのか ?? を、
この後で、B が尋ねる可能性も十分に考えられますが、ここまででこの会話が成立し終了することも考えられます。
これは日本語が文脈から意味を推測する要素を、多く含んだ言語だからだと言えます。
それに対して英語では、基本的に主語は省略されませんし、[誰々に] という [動詞に関連] も省略されません。
ということは英語では、文の中で [誰1(~した側)と、誰2(~された側)] を明示する必要があるということです。もちろん絶対に省略されないというわけではありませんが、英語では基本的にほぼ省略されないものだと言うことができます。
これを英文作成の思考過程に落とし込むなら [誰がこっちで、誰があっちなのかを決めればいいんでしょという視点] が必要だということです。
つまり最初の段階で、動詞に関連が拡張した文 [主語 動詞 動詞に関連1 動詞に関連2 ~ (+ 接着剤 説明)] の、[主語] と [動詞に関連1] を [誰(1)と、誰(2)にするのか] 頭の中で決定しておくのです。
この点を理解し実行していくと、確実に英文を作成する仕組みの理解を深めていけます。なぜなら人をどこに配置するのかという発想と、最初に動詞を決定して英文の作成を始めていくという発想を合わせると、[主語 動詞 動詞に関連1] までが、既に頭の中で構築された状態になるからです。
そうすれば後は、[主語 動詞 動詞に関連1] に動詞に関連2を付け足すだけになります。
動詞を英文作成の支点として、[誰(1)が、どこで、誰(2)は、どこ] なのかを頭の中で明確にできれば、
=> a-[俺は~した側で、彼は~された側だから、 {I gave him ~} だな]
=> b-[俺は~された側で、彼女は~した側だから、{She gave me ~} だな] と考えられるということです。(当然、動詞は表現したいことで変化します)
私はこういった発想を英文作成に利用しているので、今現在、動詞に関連が拡張する文を、概ね [主語 動詞 動詞に関連1/ + 動詞に関連2] という感覚でとらえています。
[~される] = [~される側からの視点] を利用することを基本形態とし、受動態は [物/事を主語にする場合] と、[行為者が明確ではない/明確にしたくない場合] に活用するものと考えましょう。
動詞 [give] や、[tell, bring, hand, offer] 等を英文法でとらえると第四文型となりますが、あまりそういった文型でのとらえ方は英語を話す上で必要ないかなと考えております。それについてはこちらを読んでください。
立ち位置の意識が英語のスピーキング上達に副産物をもたらす?
この立ち位置を明確にする発想を利用して、英語の [~される] という文を考えるようになると、英語のスピーキング上達につながる、もう1つ副産物を得ることが可能になります。
それはこの発想が、基本文の動詞に関連が拡張し、動詞に関連1に [人] が入る英文以外にも応用可能という点です。
例えば [私は、彼に自転車を盗まれた] という日本語を英文にしたいとします。今回の発想を活用すると [私は、彼に自転車を盗まれた] という文は、[私は ~される 誰々に] という文だと考えて、[誰々 動詞 me ~] という文かなと発想することになります。でもここで利用される動詞 [steal(~を盗む)] は [give] とは違い動詞に関連を拡張させられない動詞なので、ここで [ me ] を利用することはできません。
[動詞に関連 (目的語/補語)] の拡張については、こちらも参考にしてください。
ではその時どういう発想をするのかというと、[me] は使えないがその代替えとなるものがあればいいねと考えます。動詞に関連が拡張しない以上、そこに [me] を連想させるものを利用できればいいということです。
難しく考える必要はなく、[me] の代わりに『 my 』を上手く活用しようと考えます。
そうすれば英文は、
=> He stole my bicycle . という形になります。
要するに [私は ~された 誰かに] という最初に浮かんだ日本語を、[誰かが ~した 私に] という形に頭の中で変換すると、
---[私は 盗まれた ~を 彼に] から、
=>[彼は 盗んだ 私に] となりますが、これだと意味がおかしいので、
=>[彼は 盗んだ 私の~を] という文に頭の中で『 微調整する 』のです。
[私が~された] という部分を受けて、頭の中で誰が [~した側] の人間なのかを特定すると同時に、動詞を決定します。
その時、動詞 [steal] には [me] という部分がない(動詞に関連が拡張しない)ので、[my] を利用しようと考えるということです。
[私に/を] という [me] の部分がなくても、[my bicycle(私の自転車)] を利用することで、[私が ~された(ここでは自転車を盗まれた)] ということは十分に相手に伝わります。このように [誰がこっちで、誰があっちなのか] なのかを決める視点を持つことで、英文を作成する技術と英語のスピーキング技術を上達させていけます。
英語に限らず第二言語を話すためには、最初に浮かんだ日本語に固執しないということは重要な技術のひとつだと言えます。また、そこから見えてきた人の立ち位置を明確にする視点を持つということも、英語(または第二言語)を話すために重要な技術のひとつということです。動詞 [give] に注目すると、そこから様々な広がりを得られます。[give] を掘り下げて英語のスピーキング能力を向上させていきましょう。