前置詞を使えるようにするには、中心となる [at, in, on, to, from, for, with, without, of, about, by, until, before, after] 等のコアとなる日本語の意味 (例えば、in => [~で]) を身につけることが大事です。ただそれだけだと前置詞は意味と役割が多いので必ずどこかで行き詰まりを感じるようになります。そうなる前に前置詞全体の理解を深め、どうやって前置詞を英会話で有効活用していくのかを考えます。
前置詞の役割とは?
辞書や参考書をみると前置詞には名詞的用法、形容詞的用法、副詞的用法など数多くの役割が書いてあります。でもそういった形で頭に入れても英語を話すためには効果が少ないと感じるので、違うくくりで前置詞を考えます。
前置詞の役割を大まかに二つに分類わけします。
- 1, 説明を付け足す
- 2, 動詞の意味の幅を拡げる
1, => 前置詞で足りていない説明 (名詞/動名詞など)を付け足していく。
2, => 動詞と結びつくことで動詞の意味を拡げる (または変える)。
前置詞の役割はだいたいこの二点に集約できます。
前置詞が使われる位置はどこか?
1, [説明を付け足す]
前置詞で説明を付け足す場合、主に以下の三か所で利用されます。
a, 基本文の核の後に配置される (これが基本の位置)
b, 主語を拡張するために主語 (名詞)の後に配置される
c, 基本文の核の中の [動詞に関連 (目的語/補語)として利用される]
=> a, I ate sushi in Shibuya. (寿司を食べた 渋谷で)
=> b, The book on the table is mine. (テーブルの上の本は 私のです)
=> c, I was in the bank. (私は いた 銀行に)
a,b においては [前置詞 説明] は説明を付け足す役割で、c では [動詞に関連] として利用されているので絶対に欠かせないものと役割が少し違いますが、構成要素が同じなので同じくくりで話を進めていきます。
ここで頭に入れてほしいのは、前置詞を [前置詞 + 名詞/動名詞] という小さなユニットとして考えることです。
そうすることで当てはめる(または配置する)感覚を自身の中に形成していきます。
=> a, I ate sushi + in Shibuya.
=> b, The book on the table is mine.
=> c, I was in the bank.
(補足:英文の頭の所でも利用可能ですが、それはイレギュラーな形と覚えておきましょう)
基本文を説明すると、
基本文:[主語 動詞 動詞に関連 ~ (+ 接着剤 説明)]
([主語 動詞 動詞に関連] までが、基本文の核)
英文は [主語] [動詞] [動詞に関連] [接着剤 説明] という四つの枠組みで構成され、それら四つの枠組みは状況に応じて個々に拡張したり、複数が拡張したりします。
[主語] ,,,, I/You/He/She/We/They/It/名詞
[動詞] ,,,, [~する] という意味を表すもの
[動詞に関連] ,,,, 名詞/形容詞/me/you/him/her/us/them/it/たまに副詞(正確には動詞に関連するもの)-[目的語/補語] でも可
[接着剤 説明] ,,,, 前置詞/不定詞/動名詞/接続詞/関係代名詞/関係副詞 etc (正確には接着剤効果のあるもの)
拡張とは、それが単独ではなく何かと一緒に利用されることで、[表現できる幅を広げていくこと] を意味しています。
基本文について詳しく知りたい方は、こちらを読んでください。
2, [動詞の意味の幅を拡げる]
こ時の前置詞の配置場所は、動詞の右側です。
=> He got on the car. (彼は 乗った その車に)
=> They took over his company. (彼等は 乗っ取った 彼の会社を)
動詞が前置詞と組み合わさることで様々な意味に変化していきます。
これは日本語で熟語、句動詞と呼ばれるものです。
=> He got away from the building. (彼は 離れた/逃げた そのビルから)
=> She read back the letter. (彼女は 読み返した その手紙を)
様々な動詞とくっつけていけるので膨大な数の組み合わせが可能となります。[動詞 + 前置詞] は動詞の拡張と考えるのではなく、その塊で動詞と考えてください。
(動詞の拡張は、助動詞など動詞の左側に配置されるものを利用する場合に起こるものを指します)
動詞の拡張については、こちらを読んでください。
配置場所は動詞の後が基本で、組み合わせによっては動詞と前置詞の間に名詞などが挟まる場合もあります。(通常、代名詞は間に配置されます)
=> I got 2days off. (私は 休暇を2日取った)
=> He gave me back the money. (彼は 返した 私にお金を)
正確に言えば前置詞ではなく副詞というものもありますが、英語を話すためにはまとめて前置詞的なものとして捉えておく方が便利だと考えているのでここでは前置詞として話しを進めます。
どうやって前置詞を覚えるのが効果的なのか?
前置詞の役割と配置が頭に入ったら、そこにそれぞれの前置詞が持つ大まかなイメージを付け足していきます。
in => 内側にある状態/外から内への方向性
at => 点
on => ~の表面/面への接触
for => 目標へ向かう方向性
to => 到達点を含む方向
from => 起点からの離脱
into => 外から内部への侵入/変化
out => 外への方向性
off => 離脱/分離
away => ある場所から離れた場所(へ)
back => 元の場所/時間へ
of => N + N (部分+全体, 全体+説明)
with => 同伴/関連
without => ~がない/なしの状態
by => 期限/近接
until => 時間内での継続
before => (時間/順番の)前
after => (時間/順番の)後
within => 範囲内
during => 特定の期間
between => 明確な何かと何かの間(に)
among => 不明瞭な複数の中(に)
against => 対する
near => 近く
beside => 傍ら
around => 周り/曲がって
about => 周り/話題
behind => 背後
oppsite => 向かい側
over => 上を越えて/覆う
under => (何かの)下に
along => (縦)線に沿って
across => 十字に横切る
through => ~を通して
beyond => 境界線を越えて
above => (基準)より上
below => (基準)より下
beneath => (接触した)下に
up => (低い所から)高い所へ
down => (高い所から)低い所へ
これらはあくまでイメージなので、
-「まぁ、大体こんな感じ。」と緩く頭に入れておくことをお勧めします。
(補足:away,back は前置詞ではなく副詞ですが上記の理由でここに含めています)
前置詞のイメージをどう英会話に活用するのか?
前置詞をイメージ化しておくことの一番の利点は、この場合はこれかなという意思決定の後押しをしてくれる点にあります。
(1,説明を付け足す 2,動詞の意味の幅を拡げる のどちらの場面でも)
英語を話すことに慣れていないと、英語を使う場面で [これでいいのかな?] という疑問が常に頭の中をよぎります。それが前置詞をイメージ化しておくことで [この場面はこれだな] という結論を導きやすくできます。
英語に限らず第二言語を学習する上で絶対に欠かせないのが大量のインプット作業です。そのインプット作業の中で大事なのは、それをどうアウトプットに繋げていけるのかという点です。
前置詞をイメージ化しておくことで、 アウトプット時に記憶を引き出すトリガーとしての役割を期待できます。
単純な所でいえば、[どこどこで(場所)] という意味を付け足したい場合、可能性があるのは [in, at, on] ですが、
建物などの内側にいたな~と思えば、
=> I met him in the bank.
ある地点(点)でだったな~と思えば、
=> I met him at Shinjuku station.
何かに面した所だったな~と思えば、
=> I met him on the beach.
[~に行った] を表現したい場合、
普通にどこどこに行ったなら、
=> He went to Canada.
それに対して内側に入っていったなら、
=> He went into the room.
[下へ] という意味を表現する場合、
=> The dog was under the table. (その犬は いた テーブルの下に)-空間のある下
=> The sun sank below the horizon. (太陽が 沈んだ 地平線の下に)-(基準)より下
=> The sun goes down. (太陽が 沈む)-(高い所から)低い所へ
=> The letter is beneath a pile of papers. (その手紙はある 書類の山の下に)-(接触した)下に
このように前置詞のイメージを頭に入れておくと、似た意味を持つものを使い分ける場合に特に効果を発揮します。
このアウトプットに有効活用した前置詞のイメージは、 インプットにも効果を発揮します。
例えば [away => ある場所から離れた場所へ] のイメージが頭に入っているとします。
そして勉強の過程で [run away = 逃げる,避ける] という熟語・句動詞の意味を覚えると、そこから [away] を起点に他の熟語・句動詞の意味を連想しやすくなります。
=> He ran away from the prison. (彼は 逃走した その刑務所から)
ここから [run] という動きを伴う動詞と、[away] の相性が良さそうだと推測して、[run] 以外の動きを伴う動詞との組み合わせを考えると、
=> go away (出かける, 立ち去る)
=> walk away (置いて去る, 無傷で逃れる)
=> drive away (車で去る, {心配などを}吹き払う)
=> move away (動かす, 引っ越す)
重要度の高い動詞との組み合わせだと、
=> get away (逃げる, 離れて~へ行く, 引き離す)
=> give away (無料で配る/あげる, {秘密等を}ばらす, 正体がばれる)
=> take away (取り去る, 奪う, ~を連れて行く)
=> bring away ({考えなどを}得て戻る)
=> pull away (離れていく, 引き離す, 外れる)
他にも [away] のイメージからインプットしやすい熟語・句動詞は、
=> hurry away (急いで去る)
=> stay away (近づかないでいる, 離れている)
=> back away (後ろに下がる, 後ずさりさせる/する)
=> break away (振り切る, 脱退する)
=> throw away (投げ捨てる, {金などを}無駄に使う)
=> chase away ({苦痛などを}追い払う)
=> blow away (吹き飛ばす)
=> die away (消えていく)
=> fade away (だんだん弱くなる, 薄れる)
イメージをインプットにも活用することで、より効果的に英語表現の幅を拡げていけます。
もう一つ [in => 内側にある状態/外から内への方向性] のイメージがどれくらい熟語・句動詞のインプットに役立つのか見てみます。
重要度の高い動詞の場合、
=> get in (~へ入る, {車などへ}乗り込む, 取り入れる)
=> give in (手渡す, 屈する)
=> take in (取り込む, 聞き入る, 車に乗せていく)
=> bring in (持ち込む, 雇い入れる)
=> put in ({設備などを}取り付ける, 口を挟む, {希望などを}抱く)
=> pull in (引き入れる, 引き寄せる)
=> fill in (必要事項をうめる)
動きを伴う動詞との組み合わせは、
=> go in (入る, うまく収まる)
=> come in (入ってくる, 流行り出す)
=> walk in (侵入する, 無断で入る)
=> sneak in (こっそり入る, もぐり込む)
=> squeeze in (割り込む, 詰め込む)
=> join in (加わる, 参加する)
=> check in (チェックインする)
=> stay in (家にいる)
=> wait in (家で待つ)
それ以外でも、
=> plug in (プラグを差し込む)
=> stick in (~を~に突っ込む, 書き足す)
=> breathe in (吸い込む)
=> sink in (染み込む, 大金をつぎ込む)
=> add in (加える)
=> mix in (混ぜ入れる)
=> throw in (投げ込む, おまけでつける, 注ぎ込む)
=> cut in (横から口を挟む, ~の仲間に入れる)
=> blow in (吹き込む, 内側に吹き飛ばす)
=> break in (話を遮る, {外から}押し破る)
=> kick in (内側に蹴破る, カンパする)
=> cage in (追い込む, 追い詰める)
=> lock in (閉じ込める, {価格などを}固定化する)
=> block in (外へ出られなくする, 穴をふさぐ)
(ここで取り上げた [動詞 +α] 以外の熟語・句動詞も存在しますし、上記以外の意味を持つものもあります。取り上げたのは [away] [in] のイメージから連想しやすいものです)
前置詞のイメージをどう動詞のインプットに活用するのかは、こちらも参考にしてください。(動詞 [get] を身につける過程でどう前置詞を利用するかが書かれています)
前置詞をイメージ化して頭に入れておくことは、アウトプット/インプットの両面でメリットがあるということです。
できるだけ基本文の核を使って練習を積み重ねましょう。
[前置詞 + 名詞/動名詞], [動詞 + 前置詞] だけで英文が完成することはありません。英語を話すことは英文を作成することです。
前置詞で表現の幅を拡げていくためには基盤が必要になります。基盤となるのは基本文の核を作成する力と、動詞のインプットです。
基本文の核の作成の仕方と、動詞の重要性についてはこちらを読んでください。
勿論、前置詞のイメージは全能ではありません。前置詞の意味は多岐にわたっているのでそこにマッチしないもの、動詞の右側でイメージから意味を想像できないものも当然あります。イメージ化した前置詞をインプットとアウトプットに好影響を与える潤滑油と考えて有効活用しましょう。
前置詞のイメージを利用する前に注意したい事は
前置詞のイメージを活用する前に重視してほしいのは、日本語の意味の上にイメージを乗せていくという点です。最初の段階でイメージを優先させると、イメージはあくまでイメージでしかないので [え~っと、この場合はどれかな?] と逆に迷う要因が増えてしまいます。
最初のうちは [この日本語の場合はこれ] と頭に入っている方が便利です。
そこにイメージを付加していくようにします。
in = ~で + 内側にある状態/外から内への方向性
at = ~で + 点
on = ~で + ~の表面/面への接触
イメージの多くは主要な日本語の意味と連動しているので、そこに上乗せしていくことはそんなに難しい作業ではないはずです。日本語の感覚をまず活用しましょう。それは英語を身につけていく過程でも十分に有効です。
前置詞と主要な日本語は前回の記事の最後にまとめておいたので、そちらを参考にしてください。
また日本語を活用する重要性については、こちらの記事を読んでください。
イメージを活かすためには、軸となる意味がしっかり頭の中に入っていることが重要です。個々の前置詞が持つ主要な日本語の意味を、使う場面を想定して頭に入れていきましょう。イメージはあくまでイメージなので、前置詞、熟語・句動詞を覚えていく過程で自分なりに微調整してください。そこに英会話上達への鍵があります。