英語には利用頻度の高い動詞(重要動詞)が幾つか存在しています。[give] はその1つで、それ単体で多くの意味を持っているだけでなく、[give +α] となることで様々な意味を表現できる非常に便利な動詞です。英語が話せない頃に辞書で [give] を調べると意味の多さに辟易したりもしますが、勉強を続けて英語に馴染んでくると、[give] など、表現の幅が広い動詞を重点的に勉強する方が効率が良いことに気がつきます。今回はそんな動詞 [give] を英熟語(または句動詞)も交えて、どう使えるものにしていくのかを考えます。
動詞 [give] が持つ特徴とは?
動詞 [give] が持つ特徴を大まかに分類わけすると以下の3点になります。
- 1, [あげる/与える] という意味に集約できるもの
- 2, [くれる/もらう] という意味に集約できるもの
- 3, [get +前置詞/副詞等] で表現できるもの
動詞 [give] の良さは、[~する側の視点] だけでなく、[~される側からの視点] も持ち合わせていて、さらに前置詞/副詞等と組み合わさることで、表現の幅を拡げていける点にあります。
[give] が持つそれぞれの特徴を細かく分析する
[give] が持つ、1,[あげる/与える]、2,[くれる/もらう]、3,[get +前置詞/副詞] で表現可能な幅を個々に見ていくことで、それらをどうやって身につけていくのか考えます。
この時に重視したいのが、アウトプットを意識できる形でインプットを行うということです。その部分を意識しながら、特徴を細かく見ていきます。
1, [大まかに {~をあげる/与える} の意味でとらえられるもの]
=> I gave him the book. (~をあげる/譲る)
=> I gave the book to Bob for 1000yen. (~円で~を売る)
=> Bob gave him a seat.(席を譲る)
=> I gave Bob a ring.(電話をかける)
=> He gave me his cold. (病気をうつす)
=> He gave us a dinner party. (パーティーを開く)
=> He gave her a raise. (給料を上げる)
=> They gave me permission. (許可を与える)
=> I give you my confidence. (信用を与える)
=> They gave Bob a free hand.(自由に任せる)
=> I'll give you Bob. (~を紹介する)
=> I gave a description of the woman. (説明する-外見について)
=> He gave me a proof.(証明する)
=> Bob gave him argument. (反論する)
=> You should give him credit. (評価する)
=> They gave him too much credit. (買い被る)
=> They gave him too much attention. (ちやほやする)
=> He gave me one more chance. (チャンスを与える)
=> He gave me no choice. (他の選択肢を与えない)
[give] を身につけるのに重要なのは、大まかに意味をとらえることです。日本語の [あげる/与える/もらう] という意味に比べて、英語の [give] が持つ意味の幅はもう少し広いと考えましょう。
2, [大まかに {~をくれる/もらう} の意味でとらえられるもの]
=> Give me a smile. (笑って)
=> Give me a second. (ちょっと待ってね/少し時間をください)
=> Give me a few more weeks. (もう数週間ください)
=> Give me advice. (助言してくれない?)
=> Give me reasons. (理由を説明してよ)
=> Give me your opinions. (君の意見を聞かせてよ)
=> Give me an example. (例えば?)
=> Give me your name and address. (君の名前と住所を教えてよ)
=> Give me a job. (仕事を世話してよ)
=> Give me a call. (電話してね)
=> He gave me a lot of trouble. (彼に多くの面倒をかけられた)
=> He gave me the blues. (彼は私を憂鬱にさせる)
=> He gave me a hard time. (彼にプレッシャーをかけられた/いじめられた)
=> He gave me lip service. (彼にお世辞を言われた)
=> He gave her dirty eyes. (彼女は彼にいやらしい目で見られた)
=> They gave Bob a deadline . (ボブは彼等に期限を指定された)
1は [~する側の視点] で動詞 [give] を利用した場合で、2は [~される側からの視点] で動詞 [give] を利用した場合になります。視点を変えることで表現の幅を拡げることが可能です。
- 1 は主語に配置される人間の視点で、
- 2 は動詞に関連に配置される人間の視点です。([くれる] は me/us のみ)
英語の文を簡素化すると、通常以下のようになっています。
=>[主語 動詞 動詞に関連 ~ (+ 接着剤 説明)]
私はこれを英語の基本文と考えています。
基本文:[主語 動詞 動詞に関連 ~ (+ 接着剤 説明)]
([主語 動詞 動詞に関連] までが、基本文の核)
英文は [主語] [動詞] [動詞に関連] [接着剤 説明] という四つの枠組みで構成され、それら四つの枠組みは状況に応じて個々に拡張したり、複数が拡張したりします。
[主語] ,,,, I/You/He/She/We/They/It/名詞
[動詞] ,,,, [~する] という意味を表すもの
[動詞に関連] ,,,, 名詞/形容詞/me/you/him/her/us/them/it/たまに副詞(正確には動詞に関連するもの)-[目的語/補語] でも可
[接着剤 説明] ,,,, 前置詞/不定詞/動名詞/接続詞/関係代名詞/関係副詞 etc (正確には接着剤効果のあるもの)
拡張とは、それが単独ではなく何かと一緒に利用されることで、[表現できる幅を広げていくこと] を意味しています。
基本文について詳しく知りたい方は、こちらをどうぞ。
[なんで風邪を与えたり、笑顔をもらったりできるの?] と難しく考えず、英語では、笑顔も与えたり、もらったりするものなのねと発想することが大事です。あなたが学んでいるのは日本語ではなく英語なわけですから、日本語の感覚を英語に乗せていくのではなく英語の感覚に日本語を乗せていく必要があります。
日本語の感覚を活かすのは、それはあくまでも英語のルールの上でということです。広義の意味で [あげる/与える/もらう] と考えられるものは、[give] を利用できる可能性が高いと考えればいいと思います。
重要なのは、英語と日本語の感覚をいかに自分の中ですり合わせていくかです。
当然、そのためには練習が必要です。その時に [give] で表現可能な日本語と、英語の [give] を頭の中で深く関連付けていくために、
[I gave him the book] という例文だけではなく、
a, I gave him the book . [~あげる/与える]
b, He gave me the book . [~もらう/ くれる(me/us の場合のみ)]
c, Give me the book . [~にあげてよ/与えてよ]
といった形で、a の [~する側からの視点] と、b,c の [~される側からの視点] という二つの視点を活用するとより効果的です。
[give] を使えるものにするには、視点と立ち位置を意識することも大事です。その視点と立ち位置を意識する部分については、こちらを読んでください。
動詞 [give] が形成する英熟語
3, [get +前置詞/副詞で英熟語を形成するもの]
続いて単体ではなく、[前置詞/副詞等] と組み合わせることで可能な表現の幅を見ていきます。右側に配置される [前置詞/副詞等] の意味を意識しながら頭に入れるとより効果的です。
away => ある場所から離れた場所(へ)
back => 元の場所/時間へ
in => 内側にある状態/外から内への方向性
off => 離脱/分離
over => 上を越えて/覆う
to => 到達点を含む方向
up => (低い所から)高い所へ
(away,back は前置詞ではなく副詞)
[give away]
=> He gave his money away. (無償で与える)
=> He gave away a chance to escape. (~を逃す/失う)
=> Don't give the secret of our company away. (~をうっかり漏らす)
=> His accent gave him away. (素性がばれる)
[give back]
=> He gave me back the money. (~を返す)
[give in]
=> He finally gave in to my patience. (屈する)
=> He gave in a report. (提出する)
[give off]
=> The fruites gave off a strong smell. (発する)
[give out]
=> The engine gave out suddenly. (作動しなくなる)
=> They didn't give out the truth. (公表する)
=> His patience gave out. (尽きる)
[give over]
=> He gave over thinking about it. (~するのをやめる)
[be given to]
=> He is given to watching TV late. (~する傾向がある)
=> He is given to drink. (~におぼれる/ふける)
[give up ~ing]
=> He gave up trying to help them. (~するのを諦める)
=> He gave up smoking last year. (~な習慣、癖などをやめる)
[give up]
=> He gave her up several weeks ago. (~と別れる/縁を切る)
=> I gave it up. (諦める)
[give up on]
=> I gave up on him. (見切りをつめる/期待しなくなる)
[give oneself up]
=> He gave himself up to the police . (自首する/投降する)
[give] の英熟語は右側の前置詞/副詞等から意味をイメージしやすいものが多いです。[前置詞/副詞等] を動詞の後にくっつけることで様々な意味の動詞として活用できるのは、[give] に限らずの重要動詞が持つ特性です。他にも探せば沢山あるのでどんどんで追加して自身の基盤を強化していきましょう。
他にも、決まった表現として、
=> Give it a try. (やってみなよ)
=> Give me a break. (勘弁してよ/冗談だろ)
=> What gives? (いったい何なの/どうしたの?)
=> Give my best regards to Bob. (~によろしく伝えてください)
(=Give Bob my best regards.)
=> Give it to me stright. (ありのまま話してください/はっきり言ってください)
=> Don't give yourself too much credit. (うぬぼれるなよ/うぬぼれない方がいい)
=> 基本文, give or take a few minutes. (~、~の違い/誤差はあっても)
=> Under a given condition ,+ 基本文. (一定の状況下で、~)
英語を話す技術を身につけていく中であなたが最も頼りにするのは、英文作成を手軽に、しかも幅広くしてくれるものです。動詞 [give] は [get] などと同様にその条件を十分に満たすものです。練習し使えるようになれば動詞 [get] 等と並んであなたの英語の軸を形成するものになるはずです。
[give] と並ぶ重要動詞 [get] については、こちらの説明を読んでください。
表現できる幅の広さ以外の [give] の良さとは?
動詞 [give] には表現できる幅の広さ意外に、もう1つ良さがあります。
それは他の重要動詞 [get] とある程度互換性があるという点です。
どんな互換性かというと、
=> He gave me a book. (彼はくれた 一冊の本を) という表現は、
=> I got a book from him. (私はもらった 一冊本を 彼から) に変換可能です。
二つの文の構成を比べてみると、
=> He gave me a book. (主語 動詞 動詞に関1 動詞に関2)
=> I got a book from him. (主語 動詞 動詞に関 接着剤 + 説明)
上の [give] の文は動詞に関連が拡張した文で、下の [get] の文は接着剤を利用した文という文の構成に違いはありますが、この二つの文は基本的に同じ意味で利用できます。
[give] はいつもではありませんが、ある程度は [get] と置き換えて文を作成することが可能だということです。
よく考えてみると、日本語でも [得る/獲得する] と [あげる/与える/もらう] は多くの場合において置き換え可能です。
例えば [誰かが何かしらの賞をもらった] という場合、
a, I got the first prize. (私は一等賞をもらった/取った) を、
b, They gave me the first prize. (私は彼等から一等賞をもらった) とできます。
この互換性があることによる一番のメリットは、[get][give] を日本語の [得る/獲得する][あげる/与える/もらう] と似た感覚で利用できる点にあります。
勿論、[get][give] をインプットする時に日本語との差を上手にすり合わせておく必要がありますが、それが完了してしまえば日本語=>英語への変換がスムーズなので、それはアウトプット時において非常に大きな武器になります。そういった立ち位置の良さも [give] の強みです。動詞 [give] で表現可能な幅を意識して掘り下げ、コツコツと勉強と練習を積み重ねていきましょう。