日本語でよく登場する表現の中に [~させる][~させられる] があります。[~させる] を表現するものは [make, have] 等で、英語では使役動詞と呼ばれます。使役動詞を使えるものにするには、単体で覚えるより他の関連があるものと紐づけていくと効果が大きいです。今回は [~させる] を表現する使役動詞(make, have 等)に注目し、それをどう英語の上達につなげていくのかを考えます。
使役動詞(make,have等)の英語での役割とは?
使役動詞は [(~が)~させる (誰々)に ~を] という意味の英文を作成したい時に利用します。
=> He made me go there. (彼は 行かせた 私を そこに)
=> He let me go there. (彼は 行かせた 私を そこに)
=> He have me go there. (彼は 行かせた 私を そこに)
=> He get me to go there.(彼は 行かせた 私を そこに)
主に使役動詞と呼ばれるのは [make, let, have, get] の4つの動詞です。英語において4つの動詞は他の意味でも利用されるので、それらの動詞が持つ1つの機能に使役があると考えてください。
使役動詞の使い方を分析する
使役動詞 [make, let, have, get] の特徴は、動詞に関連が拡張して [動詞に関連2] が発生する文で、基本的に動詞に関連1に人が配置されます。
=> 主語 make 人 動詞の原形
=> 主語 let 人 動詞の原形
=> 主語 have 人 動詞の原形/動詞ing
=> 主語 get 人 to 動詞
日本語では [~させる] と同じ表記が可能ですが、[make][let][have][get] は少々意味が異なります。
- make => 強いて~させる、思わず~させる
- let => ~することを許可する/許す
- have => ~することを依頼/指示する(主に少し上の立場の人が)
- get => なんとか~させる(説得などして)
([make] は物事が主語の場合は非強制的)
([let] は許可なので、相手は~したい意志がある)
([have/get] は、[make] ほどの強制度はない)
=> He made me go there. (彼は 強いた 私が そこに行くように)
=> He let me go there. (彼は 許した/許可した 私が そこに行くことを)
=> He have me go there. (彼は 依頼/指示した 私に そこに行くように)
=> He get me to go there.(彼は 頼んだ 私に そこに行くように)
使役動詞 [have][get] は意味が近いので同じ意味で使われることも多い。
[make] の [動詞に関連2] に形容詞を配置した場合も [~させる] と考えることが可能です。
=> The news made me sad. (そのニュースは 私を悲しませた)-形容詞
=> He made me nervous. (彼は 私をナーバスにした/落ち着かせなかった)-形容詞
そこに配置される形容詞は主に [happy, sad, mad] 等の内的な感情を表すものか、[fat, rich, poor] 等の人の特徴を表すものになります。
基本文とは、
基本文:[主語 動詞 動詞に関連 ~ (+ 接着剤 説明)]
([主語 動詞 動詞に関連] までが、基本文の核)
英文は [主語] [動詞] [動詞に関連] [接着剤 説明] という四つの枠組みで構成され、それら四つの枠組みは状況に応じて個々に拡張したり、複数が拡張したりします。
[主語] ,,,, I/You/He/She/We/They/It/名詞
[動詞] ,,,, [~する] という意味を表すもの
[動詞に関連] ,,,, 名詞/形容詞/me/you/him/her/us/them/it/たまに副詞(正確には動詞に関連するもの)-[目的語/補語] でも可
[接着剤 説明] ,,,, 前置詞/不定詞/動名詞/接続詞/関係代名詞/関係副詞 etc (正確には接着剤効果のあるもの)
拡張とは、それが単独ではなく何かと一緒に利用されることで、[表現できる幅を広げていくこと] を意味しています。
基本文について詳しく知りたい方は、こちらをどうぞ。
どうやって使役動詞を使えるものにするのか?
まず [主語 動詞 動詞に関連] の後に架空の線を引き、切れ目を作ります。
=> He made me / +go there.
=> He let me / +go there.
=> He have me / +go there.
=> He get me / +to go there.
この時、日本語は以下のように考えます。
He made me /+動詞 α => 彼は強いた 私に/ +~することを
He let me /+動詞 α => 彼は許した/許可した 私が/ +~することを
He have me /+動詞 α => 彼は依頼/指示した 私に/ +~することを
He get me /+動詞 α => 彼は頼んだ 私に/ +~することを
そうすると使役動詞を [誰々は ~する(今回はさせる) ~を/に] という基本文の核に、足りていない説明を付け足していく形でとらえることが可能になります。
練習として前の部分(主語 make 動詞に関連1)は変えず、付け足す部分(動詞 +α)だけに変化を加えて、どんな意味を付け足せるか考えます。
=> He made me / +stay here. (彼は強いた 私に /+とどまることを ここに)
+read the book. (彼は強いた 私に /+読むことを その本を)
+laugh. ({強制的に/思わず} 笑わせた)-意味は文脈から判断
=> He let me / +stay here. (彼は許した 私が /+とどまることを ここに)
+send a letter. (彼は許可した 私が/+送るのを 手紙を)
=> He had me / +stay here. (彼は指示した 私に /+とどまるように ここに)
+carry the baggage. (彼は指示した 私に /+運ぶように その荷物を)
=> He got me / +to stay here. (彼は頼んだ 私に /+とどまることを ここに)
+to help his brother. (彼は頼んだ 私に /+手助けを 彼の弟の)
基本的に英語は説明を付け足していく言語です。今回の使役動詞(make, let, have, get)は [主語 動詞 動詞に関連1 /+関連2] と考えることで、英文が長くなる仕組み/構造を深い所へ落とし込んでいくことが大事です。
英文の [動詞に関連 (目的語/補語)] が拡張する仕組みについては、こちらも参考にしてください。
柔軟な思考で使役動詞の活躍の場を拡げる
日本語で [~させる] という表現は頻繁に使いますが、他に [~させられる] という表現も普段よく使われます。今まで見てきた [~させる] という表現は、主語に配置された人の視点(~する側からの視点)です。
以下の英文の日本語を [~する側] の立場から考えると、
=> He made me go there. (彼は強いた 私に そこ行くことを)-私は行かされた
それに対して [me] から日本語を眺めてみると、
=> He made me go there. (私は強いられた 彼に そこに行くことを)
これは [動詞に関連1] に配置される側からの視点 [~される側からの視点] です。
日本語で使われる [~させられる] は、動詞に関連1に配置される人から見た [~される側からの視点] に含まれているので、
[〇〇は させる 私を ~するように =>> 私は ~される 〇〇に ~することを] と考えることが可能です。
(勿論 [me] 以外の [you, him, her, us, them, 名詞] を利用すれば、[彼は/彼女は ~される] 等からの視点となります)
例えば [娘は~することを許可された][部下は~することを指示された] という表現をしたいなら以下のように発想できます。(取りあえず主語は He とします)
=> He let his daughter / +動詞 α. (彼は許した/許可した 彼の娘が /+ ~することを)
=> He had his subordinate / +動詞 α. (彼は指示した 部下に /+ ~することを)
2方向から考えることで [誰々は~させる ~することを] という日本語だけでなく、[誰々は~される ~することを] という日本語が頭に浮かんだ時にも使役動詞で対応可能となります。
この視点を活用できれば、[~されなかった/許可されなかった/指示されなかった/頼まれなかった] という日本語も無理なく英文にできます。
=> He didn't let me go there. (私は許可されなかった 彼に そこに行くのを)
=> He didn't have me go there. (私は指示されなかった 彼に そこに行くのを)
使役動詞 +否定形という形です。
この視点を有効活用するためには、人の立ち位置を意識することが重要です。誰が [~する/させる側] で、誰が [~される/させられる側] なのかを英文の中で意識しましょう。
立ち位置を意識した [~される側からの視点] については、こちらでも説明しているのでぜひ読んでください。
英語の勉強をするからといって、日本語を捨てる必要はありません。創意工夫で英語のインプット/アウトプットをより効果的にすることが可能です。日本語を活かすという発想も大事にしましょう。
使役動詞と一緒に覚えたい動詞1
使役動詞 [make, let, have, get] を頭に入れたら、ぜひ知覚動詞と一緒にインプットしていくことをお勧めします。
知覚動詞とは [see, hear, smell] などの五感に関係する動詞が [〇〇するのを見る/聞く] 等の英文を作るものです。
例文
=> I saw Bob crossing the road. (私は見た ボブ(が) その道路を渡っているのを)
=> I heard somebody play the guitar. (私は聞いた 誰か(が) ギターを弾くのを)
使役動詞と知覚動詞は、共通項が多いです。
2つの共通点
- 1, 動詞に関連が1つから2つに
- 2, 動詞に関連1に主に人が配置される
- 3, 動詞を含む説明が主に付け足される
共通点が多い2つを並べ、同じように架空の線を引いてみると、どちらも似た流れで英文が構成されていることが理解できます。
=> He made me / +go there. (彼は強いた 私に / +行くことを そこに)
=> He saw me / +talking with Bob. (彼は 見た 私(を) / +ボブと話している)
上の例文で考えると、
使役動詞は => 彼は強いた 私に(を) /+ ~することを/~に(を)
知覚動詞は => 彼は見た 私(を) /+ ~する/~している/~される
非常に似た流れで説明を付け足していくので、一緒に練習して頭に入れましょう。
=> He made me / +stay here. (彼は強いた 私に /+とどまることを ここに)
=> He saw me / +get into the car. (彼は見た 私(が) /+その車に乗るのを)
+drinking beer. (彼は見た 私(が) /+ビールを飲んでいるのを)
勉強の流れとしては、1,軸となる表現を覚える(使役動詞なら make) => 2,似た表現を追加する(let,have,get) => 3,似た形態の英語表現を一緒に覚える(知覚動詞)
知覚動詞については、こちらに詳しく書いてあるのでどうぞ。
使役動詞と一緒に覚えたい動詞2
使役動詞 [make, let, have, get] を覚える時に同時にインプットしてほしいのが、[force(強制する), compel(無理して~させる), allow(許す), permit(許す/許可する)] です。
細かな意味を比べれば若干違いがありますが、通常 [force, compel] は [make] の代わりに、[allow] は [let] に代変え可能です。(permit は主に公的な許可)
例文
=> He forced me to stay here. (彼は強いた 私に とどまることを ここに)
=> He allowed me to stay here. (彼は許した 私が とどまることを ここに)
これらの動詞は動詞に関連2に [to 動詞] を配置するので、形としては使役動詞 [get] と同じです。
英単語、英熟語、英語表現を少し覚えたからといって英語が話せるようにはなりません。多くのインプットが必要です。何か軸となるものを覚えそこに他のものを紐づけていくのが効果的です。なぜ英文が長くなるのか、どうすれば英文を長くできるのかを自分の中で明確にしながら勉強と練習を積み重ねていきましょう。