〇〇するのを見る/聞く等、英語には知覚動詞と呼ばれるものが存在します。知覚動詞は通常の英文とは若干異なった文の形態をとることが可能です。知覚動詞は日常会話でよく使われる表現なので、それがどういったもので、どう使うのかを十分に理解することには非常に大きな価値があります。今回はそんな知覚動詞に注目し、どうやって使えるものにするかを考えます。
英語の知覚動詞とはどんなものか?
知覚動詞とは、[see(見る), look(見る), watch(見る), hear(聞く), listen(聴く), smell(嗅ぐ), feel(感じる), notice(気づく), taste(味わう)]等、五感(視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚)を英語で表現する動詞のことです。感覚の動詞と呼ばれることもあります。
見ると聞くの違いは、
see は、(無意識に)目に入る。
look は、(意識的に)見る。
watch は、見ている対象に何か変化が起きている(動いている、
走っている等)場合か、変化が起こることを期待して見る場合。
映画、演劇は例外的に [see, watch] のどちらでもOK。
hear は、(無意識に)耳に入る。
listen は、(意識して)聴く。
知覚動詞の文の形態を分析する
知覚動詞は、
=> I saw her in the bank. (私は見た 彼女を 銀行で)
=> He heard a strange noise. (彼は聞いた 奇妙な物音を)
=> She smelled her hands. (彼女は嗅いだ 自身の手の匂いを)
=> Bob tasted the soup. (ボブは味わった そのスープを)
基本文の核 [主語 動詞 動詞に関連] で形成された英文を作成するだけでなく、他に動詞に関連を拡張させ [動詞に関連2] を発生させた英文の作成が可能です。
=> I saw her talking with Bob. (私は見た 彼女を ボブと話している)
=> He heard somebody playing the piano.(彼は聞いた 誰かが ピアノを弾くのを)
=> She smelled something burning.(彼女は嗅いだ 何かが 焦げる匂いを)
知覚動詞はこのように通常の英文とは異なった形態をとれるので、通常の動詞と区別されていると言えます。
その場合の主な配置は、
主語 (知覚)動詞 人/名詞 動詞の原形/動詞ing/動詞の過去分詞 +α
(動詞の原形の正しい表記は原形不定詞なのですが、こちらの方がわかりやすいと感じるので動詞の原形にしてあります)
この知覚動詞の文の流れを日本語で考えてみると、
~は見る 誰々が ~するのを/~しているのを/~されるのを
~は聞く 誰々が ~するのを/~しているのを/~されるのを
~は嗅ぐ 誰々が ー /~しているのを/ ー
~は感じる 誰々が ~するのを/~しているのを/~されるのを
~は気づく 誰々が ~するのを/~しているのを/~されるのを
注: smell は動詞ing のみで利用され、taste はこの形を取らない。
通常の英文の流れは [~は/が ~する ~を(に)] となりますが、知覚動詞ではその他に、誰かが何かを [行った/行っていた/された] ことを、見る聞く(または見たり聞いたりした)ということも英語で表現可能ということです。
動詞の原形と、動詞ing での意味の違いは、動詞の原形は~する一部始終を見たり聞いたりしたのに対して、動詞ing では~する瞬間を見たり聞いたりしたという点です。
基本文とは、
基本文:[主語 動詞 動詞に関連 ~ (+ 接着剤 説明)]
([主語 動詞 動詞に関連] までが、基本文の核)
英文は [主語] [動詞] [動詞に関連] [接着剤 説明] という四つの枠組みで構成され、それら四つの枠組みは状況に応じて個々に拡張したり、複数が拡張したりします。
[主語] ,,,, I/You/He/She/We/They/It/名詞
[動詞] ,,,, [~する] という意味を表すもの
[動詞に関連] ,,,, 名詞/形容詞/me/you/him/her/us/them/it/たまに副詞(正確には動詞に関連するもの)-[目的語/補語] でも可
[接着剤 説明] ,,,, 前置詞/不定詞/動名詞/接続詞/関係代名詞/関係副詞 etc (正確には接着剤効果のあるもの)
拡張とは、それが単独ではなく何かと一緒に利用されることで、[表現できる幅を広げていくこと] を意味しています。
基本文について詳しく知りたい方は、こちらをどうぞ。
動詞に関連が拡張し [動詞に関連2] を発生させるのは動詞 [give, show, tell, bring, hand, offer, throw] 等も同じですが、両者には大きな違いがあります。
動詞 [give, show, tell, bring, hand, offer, throw] 等は [動詞に関連2] に名詞を配置させるのに対して、知覚動詞は名詞ではなく動詞を含むものを配置します。
=> He gave me a book. -[動詞に関連2が、名詞]
=> I saw her talking with Bob. -[動詞に関連2が、動詞ing +α]
知覚動詞の方が動詞を含む説明を付け足せるので、説明できるものに幅があります。
動詞 [give] 等の使い方については、こちらを参考にしてください。
知覚動詞をどうやって使えるものにするのか?
まず上で説明した [give] の文と知覚動詞の英文を並べてみてください。
=> He gave me a book.
=> I saw her talking with Bob.
この英文を使いやすくするために、[主語 動詞 動詞に関連] の後に架空の線を引き、切れ目を作ります。
=> He gave me /a book.
=> I saw her /talking with Bob.
私は英語の軸となるのは基本文の核 [主語 動詞 動詞に関連] だと考えているので、[~は/が ~する ~を(に)] に接着剤無しで説明を付け足すイメージで考えます。
イメージとしては、
=> 彼はくれた 私に / + 一冊の本を
=> 私は見た 彼女(を) / + ボブと話している
動詞によって付け足せるもの(動詞に関連2に配置可能なもの)に幅があるので、動詞に関連1の後に線を入れることで間を取り、何を付け足すのか考える時間を少し稼ぐ感じです。
上の英文の型は付け足すものが名詞なので線を引かなくてもと思うかもしれませんが、その文で架空の線があることをイメージ化できると、今回の知覚動詞でも付け足す部分をイメージしやすくなります。
=> I saw her / +talking with Bob.
=> He heard somebody / +playing the piano.
=> She smelled something / +burnig.
切れ目を思考の基点にすることで、切れ目以下の変化に対応できることを目指します。
=> I saw her / +talk with Bob.
+walk along the street.
+waiting for a bus.
+arrested by the police.
+surrounded by sheep.
[主語 動詞 動詞に関連] までを作成してそこで間を数秒取り、その瞬間でそれに続く説明(動詞に関連2)を考えていく練習を繰り返し行います。
そういった練習を繰り返すことで、
-「こんな説明が/も付け足せるな」という事を認識し、知覚動詞と付け足せる説明をリンクさせていきましょう。
[動詞に関連] の拡張については、こちらの記事を読んでください。
どう英文を解釈するかで、以後の使用率は変わる?
英文の解釈の仕方によっては折角インプットしたものが使いにくくなるというケースもあります。
英文法の本を読むと、知覚動詞は2つの文を1つで表現したものと説明されています。
1, I saw Taka.
2, He was talking with Bob.
そしてその2つの英文を繋げて、
=> I saw Taka talking with Bob.
英語の勉強を再度始めた頃の私は、この英文が形成された経緯を踏まえて、
=> I saw / Taka talking with Bob. と動詞の後で文を区切り、
-- 私は見た/ タカがボブと話しているのを
という感覚で知覚動詞を利用していました。最初の頃は意外と上手くいっていたのですが、基本文の中に4つ枠組みが存在し、それらが個々に拡張していくと考えるようになると、急激に知覚動詞の利用頻度が落ちていきました。
利用頻度が落ちた要因は、[give, show, tell, bring, hand, offer, throw] 等の切れ目は動詞に関連1の後と考えるようになった事でそれと違う場所で線を引いていた知覚動詞を使いにくいと感じるようになったためです。([give] 等の英文の方が英語の中での重要度が高いと考えたからとも言えます)
時間はかかりましたが修正を行い、同じ場所(動詞に関連1の後)に切れ目があると考えることで、無理なく使えるようになりました。
=> I saw Taka / talking with Bob.
-- 私は見た タカ(を)/ ボブと話しているのを と現在は考えています。
ここでお伝えしたいのは正しく線を引く必要があるといった話ではなく、何かを覚える過程で利用した方法が他の状況との絡みで使いにくくなったら、躊躇せず適時修正を行おうということです。英文の解釈を変えるわけではなく、自分が使いやすい形で日本語を組み込んでおくということです。
知覚動詞を使いこなすための、もう1つの工夫
私は周りに英語がほぼない状態(スペイン語圏)で英語の再勉強を行ったので、日本語の感覚/発想を活かしたいという考えが常にあります。
日本語を活かすという視点は、この知覚動詞においても有効です。
英語を話すことを目指すわけですから、大事なのは英語のルールの上にどれだけ都合良く日本語を乗せていけるかになります。なので工夫するのは [日本語から英語にする前の日本語の部分] です。
通常、私は英文を考える場合、今回の知覚動詞も例外なく、
=> I saw her + talking with Bob.
-- 私は見た 彼女を +ボブと話している と日本語は英語の配列で考えます。
ただこの知覚動詞はその流れで日本語をインプットしていると、動詞によっては都合が悪いものが出てきます。
例えば [hear]、
=> I haead her + sing a song.
-- 私は聞いた 彼女を / 歌を歌っている だと変な意味になります。
ここで問題になるのは [彼女を] の、[を] の部分です。これはその部分を [を] ではなく [が] で考えれば解決可能なのですが、そうすると別の部分に不都合が生じてきます。
それはその場合の日本語と、動詞に関連が拡張しない知覚動詞の日本語が違ってくるという点です。
1, I saw her +in the bank. (her 以降は [接着剤+説明] です)
?,,,, 私は見た 彼女が 銀行で だとおかしくて、
o,,,, 私は見た 彼女を 銀行で でないと意味を理解できません。
また [が] で考えるのであれば、動詞の後に線を引いた方がしっくりくるのですが、そうすると上で説明したように動詞 [give] 等と違う形になって使用頻度が減るというジレンマ...
そこで色々と考えた末に行き着いたのが、知覚動詞においては [を] を失くした状態で考えるという対応策です。
私は見た 彼女(を) / 銀行で
私は見た 彼女(を/が) / ボブと話している
私は聞いた 彼女(が) / 歌を歌っている
そういった状態で日本語を活用することで、諸々の問題点を上手く処理できたと考えています。
英語を上達させるために英語の部分にだけ目を向ける必要はありません。日本語に工夫を加えることでアウトプットの手助けは可能です。
日本語を英語に活かす点については、こちらも参考にしてください。
自分ならこうするという視点は、〇〇するのを見る/聞く等、英語の知覚動詞に限らず第二言語を勉強していく上で非常に重要なものです。それがあなたの英語上達への重要なステップとなります。考え工夫し勉強と練習を積み重ねていきましょう。